ジュネーブ(2018年4月24日)| 国連環境金融イニシアティブ(UNEP FI)の署名機関である16の大手銀行は、気候変動と気候に関する行動がビジネスにどのような影響を与えるかについて銀行の理解を深めるために、共同で開発した手法を発表しました。

この取り組みは、銀行がTCFDに沿って気候関連のリスクと機会へのエクスポージャーをより透明なものにするための基本的なものです。また、銀行が低炭素経済への移行に貢献し、かつ、その恩恵を享受するために自らの戦略に生かし、さらには、同じ目的のために顧客への働きかけを行い、支援することにもつながります。そもそも、銀行が直面する気候関連のリスクと機会とは、顧客に対するサービスから生じるものであるため、そうした顧客への働きかけや支援ということが非常に重要になります。

今回公表された方法論やそれらを支える資料の数々は、過去10カ月間にわたる独自の、かつ協力的なプロセスから生み出された最初の成果物であり、与信部門、リスク管理部門、、サステナビリティ推進部門、ビジネス企画部門など、銀行内のさまざまな部門間の協力と、業界をリードする科学者やリスク・投資管理の専門家らとの協力により実現しました。

今回のパイロット・プロジェクトを主導し、現時点で試験的に実施している銀行は、オーストラリア・ニュージーランド銀行、 バークレイズ、BBVA、BNPパリバ, ブラデスコ, Citi, DNB, イタウ・ウニバンコ、 ナショナルオーストラリア銀行、ラボバンク、ロイヤル・バンク・オブ・カナダ、サンタンデール、ソシエテ・ジェネラル、スタンダード・チャータード、トロント・ドミニオン銀行、UBSの16行で、これらの研究は、コンサルタントのオリバー・ワイマン、マーサー、アクリマティスがリード、国際応用システム分析研究所(IIASA)およびポツダム気候影響研究研究所(PIK)の科学者らの支援を受けました。

国連環境計画のErik Solheim事務局長は、「今日、世界が直面している多くの環境問題、特に気候変動は、根本的な原因の1つである短期主義によるものである。金融市場は持続可能性に関わる課題に取り組むための触媒となりうるが、そのためにはより長期的な視野に立つ必要がある」と述べ、さらに、「TCFDフレームワークが素晴らしいのは、組織が長期的な影響を検討し開示することを奨励するところにある。このような視点の変化こそが、持続可能な発展を実現するために必要なことだ。だからこそ、国連環境計画として、私たちは金融業界のこうした熱心なリーダーたちと協力して働くことに大きな意義を見出している」と続けました。

今回の報告書で示された手法は、TCFDが奨励する気候関連のリスクと機会の評価を実施するために特に銀行業界向けに設計されたもので、公に利用可能なガイダンスと提供されるものとしては初となります。具体的には、PIK、IIASA、IEA(国際エネルギー機関)が開発・提供している最先端の気候変動シナリオを適用して、低炭素経済移行が貸出ポートフォリオに与えるリスクと機会を評価する方法として銀行に大変役立つでしょう。

「われわれが1年足らず前に提言を発表した際、銀行や他の金融機関を気候関連の開示情報の利用者としてだけでなく、自らが開示対象であるとの見方に対しては、慎重に検討した。金融機関が金融の安定を維持し、経済の脱炭素化に資金を供給する上で重要な役割を果たさなければならないことは自明だ。」UNEP FI共同議長、TCFD副議長、AXAグループのシニア・エグゼクティブであるChristian Thimann氏はそのようにコメントし、

「しかしながら、金融機関がこうした行動をとり、必要な評価を行い、有意義な開示を行うための実効性があり、かつ実践的な方法を見出すことは難しい。」と続けた上で、「このグループの貢献に感謝する。」とつけ加えました。

分析手法は以下のように設計されています。

  • 既に銀行が使用している既存のリスク評価の専門知識、手続き、モデルを基盤とし、
  • 様々な気象緩和シナリオの下で、リスク・エクスポージャーさらに新たな潜在的機会が将来どのように発展するかについて、十分な情報に基づいた評価を可能にし、
  • 各行が様々な地域やセクターにわたってリスクと機会を調査できるようにし、
  • 通常のストレステスト期間である2~3年を大きく超える長期的な洞察を提供する。

今回のフレームワーク公表を通じて達成された進展は、根本的なものです。

「科学者、リスク管理に従事する実務家、サステナビリティの専門家が協力して取り組んでいるこの取り組みを通じて、気候リスクを意識した意思決定と資源配分の強化を支援する革新的な方法論を打ち出すことができた」とオリバー・ワイマン・パートナーのジョン・コーラス氏とファイナンシャル・サービシズ・アメリカの副会長は述べており、さらに、「実践方法がますます進化し、産業界の実務家、企業、政策立案者、気候を専門とする科学者から新しく、より細かいデータが生まれるにつれ、この方法論はさらに強化されることが期待される。ベスト・プラクティスを開発するためには、セクターや専門分野を越えた追加作業が依然として必要である。」と括っています。